HONZ『震災ビジネスの闇』

4796687815
震災ビジネスの闇 (宝島SUGOI文庫)
著者 : 夏原 武
出版社 : 宝島社
発行日 : 2011/12/6

本を読んでいて気持ちが悪くなったのは、久しぶりだ。東日本震災では直後に強盗や暴動を起こさない日本人の行儀の良さが世界のメディアに取り上げられ、評価された。しかし、その裏側では隙を狙ったブローカーたちが獲物を狙っていたのだ。3月中旬、とあるリフォーム会社が求人広告を出していた、それは東北で震災被害を受けた住宅へのリフォーム営業の求人であった。家はリフォームする必要があってもなくても関係ない。少々の不正や写真偽造を行いながら、人々の不安を煽り、受注していく。今は辞めてしまった元営業マンは容易く実績を積み上げられたと語る。

あのがれきの山で価値があるものは木材である。これから木造で家を建てるまたはリフォームを検討しているならば、その木材の出どころには注意した方がいい。水浸しになった東北の木材が混ざっているかもしれない。津波に流されたパソコンや携帯電話は都市鉱山と化す。津波に流された山積みの自動車もパーツごとに分ければ、商品の一つになる。

もちろん都内でも震災や原発事故に便乗して、機能は至って普通だが、浄水器やマスクが訪問販売により、高額で騙し売られていった。スーパーやコンビニで震災後に起こった物不足、メディアから流れ続けるネガティブな情報が人々の不安を煽ったことも影響している。うがい薬や緑茶や放射能を吸収すると言われたサプリメントはこの時期、かなり売れたに違いない。その情報の発信者が製造メーカーや販売店だったら、ステマで許される範囲ではないだろう。そうでないことを祈りたい。

不謹慎かもしれないが、読み進めれば気持ち悪さや怒りを超えて、メインストリームから追いやられたヒトたちがしたたかに生きる智慧にすら思えてくる。タイやインドで観光客に狙いを絞って値段を吹っかけてくるタクシー運転手や土産屋のおばさん、インド・ムンバイのスラムのリサイクルビジネス,ゴミから資源を取り出すスカベンジャーと類似した現金獲得方法だ。もちろん弱者を騙すことは許されることではないが、、、。

Naoki Yamamoto
1983年12月25日 石川県生まれ。野球漬けの高校生活を経て、北海道大学農学部に入学。「スノーボード、旅、読書」の三種の神器に明け暮れる。卒業後、システム会社に営業職で入社。 2009年株式会社グランマを立ち上げ。1年後に発展途上国の貧困層に必要なデザインやサービスを展示する「世界を変えるデザイン展」を六本木で開催、2万人を動員。2014年12月に退職し、現在無職。仕事の傍ら、ノンフィクション書評サイトHONZに参加中。