HONZ『喜びはどれほど深い?:心の根源にあるもの』

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喜びはどれほど深い?: 心の根源にあるもの
著者 : ポール・ブルーム、小松 淳子
出版社 : インターシフト
発行日 : 2012/1/20

本日、2月14日、バレンタインデー。この日にちなんだ女性のしたたかな作戦は多くのドラマや実際の体験談で語りつがれている。一方で男性は数多くのドッキリの被害にあってきたに違いない。勝手な妄想だがバレンタインデーはエイプリルフールに負けず劣らずドッキリが仕掛けられてきたはずだ。

話は変わって第二次世界大戦中のドイツ、そこで起こったとんでもない事件。ヒットラーの右腕で後継者とされていたヘルマン・ゲーリングは、ヒットラーと同様に美術品のコレクターだった。大戦中、ヨーロッパ中で様々な絵画を盗み、巻き上げ、たまに購入していた。そんな彼が最も欲しかったのはフェルメールの作品、もちろんヒットラーは2作持っていた。ゲーリングがフェルメールを買うために、やっとのこと見つけた画商は ハン・ファン・メーヘレンというオランダ人。彼からフェルメールの作品を約1千万ドルで購入、これはゲーリングの一番大切な絵となった。ゲーリングが第二次大戦後に逮捕され、死刑宣告をされ、所蔵品を捜索する過程でハン・メーヘレンも逮捕された。メーヘレンはこう言った。

「あのナチに素晴らしい巨匠の作品を売ったりなどしてません あれは自分で描いた贋作です」

誰も信じなかったが、彼は実際に美しいフェルメールの絵を描いて証明したのだ。その絵の持ち主だったゲーリングはすべての面で残忍でナチの基準でも残忍な男だったが、その事実を知らされたとき、彼はこの世の悪を生まれて初めて目にしたかのような表情を浮かべ唖然としていた。同じように見える絵は由来が異なり違う芸術作品だったのだ。美術館が騙されて展示していた他のハン・メーヘレンの贋作もその由来故に、すべて撤去された。

なぜ由来が重要なのか?どこからきたのかという知識にどうしてこれほど影響を受けるのか?多くの異分野の専門家がこの問いに対する答えを持っているが、本書では心理学のアプローチから「人は生まれつきある程度、本質主義である」ことをベースにしている。本質主義?ちょっと分かりにくいが、本書の最後まで読み進めていけばなんとなくは理解できる。しかし、言葉の意味を理解するよりも、具体論の方が分かりやすいから次の例に移るとしよう。次の例も本書で笑える事例の1つだ。

誰が創作したのか?が重要だということにアンチテーゼをと、モダンアートの芸術家はあらゆる皮肉じみた作品を創作している。特にこれぞ!というものがピエロ・マンゾーニの作品、その名も『芸術家の糞』である。90個も創ったようだ、大変そうだ。その作品購入に6万1000ドルをつぎ込んだギャラリーもある。ここで、マンゾーニの言葉を拝借。

「コレクターが芸術家の身体に時価に触れた正真正銘の私物を本気で欲しがるなら、芸術家本人の糞がいい」

そんなお茶目なマンゾーニはわざと、缶詰の加圧厳菌の手を抜いていた。その結果、美術館や個人コレクションに誇らしげに展示されていた缶詰の半数が、後日、爆発したそうな。滑稽すぎて笑いが止まらない!芸術家とはとんでもなく恐れ多い存在だ。

ここまでの話を簡単にまとめるならば、人間は「見たり感じたり聞こえる」ことにそのままに反応せず、それが実際何であるか? どこからきたのか? また何で作られていて 目に見えない性質は何か?という自分の信念に条件付けされてしまっているのだ。さて、冒頭にも触れたが本日、バレンタインデー。チョコレートを渡す予定の女子の皆様、すでに手持ちの義理チョコを渡すときに、さりげなく”わざわざ感”を出せば男性の喜びが増幅するはず。そんなこと言われなくても反射的にやっている女子が多そうだが。

こんなに面白いのに、装丁とタイトルがもったいないことになっているなーと正直思った。が、深読みすれば、それは本書の「見た目でわからない本質」を見つけられるかな?という挑戦状かもしれない。買うも買わぬも、あなたの本質を見抜く力次第!

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赤ちゃんはどこまで人間なのか 心の理解の起源
著者 : ポール・ブルーム、undefined、ポール・ブルームのAmazon著者ページを見る、検索結果、著者セントラルはこちら、春日井 晶子
出版社 : ランダムハウス講談社
発行日 : 2006/2/9

本書の著者イェール大学心理学部教授ポール・ブルームの代表的な著作。人間らしさの源泉を探っていく一冊。

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フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)
著者 : M. チクセントミハイ、undefined、M. チクセントミハイのAmazon著者ページを見る、検索結果、著者セントラルはこちら、Mihaly Csikszentmihalyi、今村 浩明
出版社 : 世界思想社 (1996/08)
発行日 : 1996/08

喜びといったら、この本を思い出す本読みのみなさんも多いのではないだろうか?マズローの自己実現の概念を超える一冊として、かなりのロングセラーになっている。最近では、ゲーミフィケーションの文脈で取り上げられて、再び注目が集まっているようだ。

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チョコレートの真実 [DIPシリーズ]
著者 : キャロル・オフ、undefined、キャロル・オフのAmazon著者ページを見る、検索結果、著者セントラルはこちら、北村 陽子
出版社 : 英治出版
発行日 : 2007/8/27


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Naoki Yamamoto
1983年12月25日 石川県生まれ。野球漬けの高校生活を経て、北海道大学農学部に入学。「スノーボード、旅、読書」の三種の神器に明け暮れる。卒業後、システム会社に営業職で入社。 2009年株式会社グランマを立ち上げ。1年後に発展途上国の貧困層に必要なデザインやサービスを展示する「世界を変えるデザイン展」を六本木で開催、2万人を動員。2014年12月に退職し、現在無職。仕事の傍ら、ノンフィクション書評サイトHONZに参加中。