人間を探究する新たな視点『きみの脳はなぜ「愚かな選択」をしてしまうのか』

進化心理学は合理的な経済学とその肩の上に乗っている行動経済学の両分野の肩の上に乗って、世界を新たな視界で見てみようとする学問だ。けっして合理的な経済学者や行動経済学者を葬り去ろうとしているわけではない、かなりケンカ腰だけれども。

けれども、僕はこの進化心理学ですべてを説明しようとすることには否定的だ。もちろん、一部は説明できる。けれども、人間理解すべての背骨になるとは思えない。じゃあ、どの領域において、進化心理学を通じての人間理解が優れているのだろうか。

そのために、まずは本書で述べられている合理的な経済学と行動経済学それぞれによって説明できる領域を明らかにしていく。

合理的な市場原理は人の意思決定のごく一部にしか当てはまらない。私たちの生活を思い浮かべてみれば、すぐにその理由がわかる。妻、両親、友人、隣人、同僚、ビジネスパートナーなど親密な相手ばかりだ。そんな人たちに、自分の利益だけを考えて、相手を利用すれば、自分のまわりから人が離れていってしまうだろう。あげくの果てに、ソシオパシーと間違えられ、精神病院に送り込まれる。

行動経済学者は、人の決定が単純化しすぎていたり、自滅的だったり、バイアスがかかっていたりしがちな事例を数多く暴露してきた。けれど、そのバイアスを深くのぞけばのぞくほど、馬鹿げた不合理な意志決定にも、深い進化レベルで理にかなった無意識のプログラムが導きだしたものである、そう考えるのが進化心理学だ。

心の限界に対する不満を並べたリスト作成に留まらずに、進化と意志決定のつながりを深く掘り下げていけば、「人間とは何か?」という探究にさらに深く潜っていける。