目的の罠

そもそも生きる目的などない。

けれど、不特定多数とのコミュニケーションにおいて、予測不可能な人間を相手にすることは難しい。だから、相手は目的を知りたがる。そうして、本人は自分に問いかけて、一貫性や必然性を発掘し、目的なる幻想を作り上げる。その目的は、相手のレイヤーにあわせて、伸び縮みさせることができる。

相手の理解を得られやすくなり、いつの間にか気持ちがよくなっていく。そして、さらなる一貫性を求めて、根源的に突き詰めていく。いつの間にか、相手の問いかけに関係なく、固まりはじめた目的を振りかざすようになる。目的がコミュニケーションの万能薬になっていく。もともとは中身なんてなかったのに。ただの幻想のストーリーだったのに。

相手の予測可能性のために作り上げた目的にいつの間にか、自分自身が拘束されていく。

そもそも生きる目的などないのに。

Naoki Yamamoto
1983年12月25日 石川県生まれ。野球漬けの高校生活を経て、北海道大学農学部に入学。「スノーボード、旅、読書」の三種の神器に明け暮れる。卒業後、システム会社に営業職で入社。 2009年株式会社グランマを立ち上げ。1年後に発展途上国の貧困層に必要なデザインやサービスを展示する「世界を変えるデザイン展」を六本木で開催、2万人を動員。2014年12月に退職し、現在無職。仕事の傍ら、ノンフィクション書評サイトHONZに参加中。