読んだ本ベスト9(2015年)※honz紹介本を除く

ということで、2015年のベスト9をまとめてみた。HONZで紹介しなかったものからピックアップ。


現代の消費社会の構造を暴いた一冊。アンチ消費主義や大企業やグローバル企業への反感や不信感、オーガニックや地産地消を賞賛する、そんな文化的左派やヒッピーたちがいかにして消費文化に取り込まれていったか、取り込まれているかを書いている。

特に象徴的だったのは、「アドバスターズ」というカナダの消費主義を批判する雑誌が、自分たちの雑誌名をブランドにしたスニーカーを販売した出来事。これまで散々、アディダスやナイキを批判してきたアドバスターズがなぜ、スニーカーを?サプライチェーンが公正で搾取がなければ、アドバスターズはスニーカーをつくって消費文化を体現しているけど、どうなの?という著者ヒースの問いかけ(たしか、うる覚え)。

個人的に、若かりし頃の自分はまさにこの本で扱われているような反逆的な若者であったし、エクストリームスポーツのコミュニティに参加していることで、知らずうちに刷り込まれていた、その刷り込みを意識化できた一冊。


2015年前半は福田恆存の箴言に、心を震わせていた。本書以外にも、3冊読み、勢い余ってシェークスピアも読み始めた。小学生の頃に見た『ベニスの商人』。当時の記憶はイメージだけ、改めて読んでみて、ここまで深い含蓄のあるものだったとは。衝撃だった。

さらに勢い余って、箴言をNAVERでまとめた。感動すると、ついつい手が先に動いてしまう。

自然のままに生きるという。だが、これほど誤解されたことばもない。もともとも人間は自然のままに生きることを欲していないし、それに堪えられもしないのである。程度の差こそあれ、だれでもが、なにかの役割を演じたがっている。また演じてもいる。


本書はさらっと、ブログを書いた。この本を含め、ジョセフ・ヒースで翻訳されている4冊は、今年ですべて読みきった。どれもこれも面白いので、本当にお勧めである。ただ面白いだけではない、社会科学の最前線でもある。今年は勢い余って、年末にヒースの理論書『ルールに従う』の翻訳を担当された中央大学の瀧澤教授を訪問し、身も蓋もない話をしてきたことも、ここで報告。


共産主義者を親に持ち、プラハの同じ学校で机を並べた4人の同級生のその後を追いかけた。冷戦や国家に翻弄されて生きた人たち、個人の生活や思想は個人の意志だけで、どうにかなるものではない。過去を否定できないままに、過去を引きづりごまかし続ける人もいる。国家の方針に翻弄され移住をし、親の愛情や思惑に運命を左右される人など、4人の生々しい個人史は、日本でのほほんと暮らす私たちには想像できない。事実は小説よりも奇なり。


社会学の祖、マックス・ウェーバーが生前書き進めていた『国家社会学』。そのオマージュとして、国家についてまとめた一冊。国家という捉えどころのない組織について、起源、歴史、影響力、そして現在から未来を全15章でまとめている。章ごとに、切り口(例えば、ナショナリズム、統計、グローバリゼーションなど)を変えているので、読み進めて飽きない。国家を語る本は多数あるけれど、体系的にまとめられた本というのは今までなかったと思う。本書は知識と知識の隙間を埋めてくれる副読本としておすすめです。


KJ法を生み出した川喜田二郎が、これまでの方法論や経験について、縦横無尽に語り尽くした。晩年の一冊。KJ法の本質にある「混沌をして語らしめる」、W型で進める創造法、その中でのフィールドワークの重要性、そして、探検の五原則(第1原則:「360度の視角で取材せよ」、第2原則:「飛び石伝いの取材」、第3原則:「ハプニングを逃さず」、第4原則:「何だか気にかかる」、第5原則:「定性的にとらえよ」)。まとめられた原則はもちろんのこと、川喜田二郎が大学教授の職を辞して取り組んだ、「移動大学」など、具体的な実践例が豊富で、あ、そういう風な実践から生まれてきた方法論なのね、なるほーど、と納得にもつながった。


こちらも、ブログにまとめた。道楽と職業はトレードオフだとはっきり断言している。ついつい、両立させようとするが、同時期にそれをやるのは無理だし、割り切った方がいいということ。たった17P、そして青空文庫で無料、そして誰もがご存知夏目漱石。


少年時代にチェスで名を轟かせ、映画のモデルにもなった著者。しかし、世間の熱狂により、集中してチェスができる環境ではなくなり、道教や儒教の本をよみはじめ、その影響で太極拳を始めることになる。今や太極拳でも頂点を極めつつある著者が、チェスと武術、体の使う部分も考え方もまったく異なるように思える二つを橋渡しして、習得することを語り尽くしていく。メタ認知能力が凄まじく高いのだろう、俯瞰して自分の状況を言語化している、そして文章もうまい。「人生を左右するのは1%の積み重ね」という記事があったが、著者は1%どころか、50%以上を習得のための改善に活かすことができているのではないだろうか、すごい、そして真似することは不可能だが、エッセンスを自分の日常に活かすことはできると思う。


9冊目、最後はビジネス書。名だたるリーダーが推薦する復刊本である。内容は少し古さを感じるが、分かっちゃいるけどやめられないとか、とりあえず行動してみたけど成果がでない、誰もついてきてくれない、よくあるマネージャーの悩みに、真正面から答える一冊。意志の力を過大評価しすぎている感が否めないが、科学的な真理を求めるのではなく、ビジネスでの成功をゴールにしているから、そもそも目指しいているものが違うということだ。言わんとしていることを僕なりに解釈すれば、「先ず隗より始めよ」なんだろうか。現実世界で背中をぐいっと押される良き啓蒙書。

【と、最後に読書傾向の自己分析】

2015年は本を135冊(うちKindle21冊)を読破。本の記録をとりはじめた2008年以降では、最小である。忙しかったというわけじゃない。2008年以降、もっとも時間に余裕のある一年を過ごした。しかし、会社を離れ、失意の底にいた年始から、はじめてのフリーランスという立場での仕事をやりつつ、新たな道を求めての転職活動のためにエンジンをのせかえてからの新しい職場への適合だった。一年をとして、状況がくまなく変化し、心穏やかでいられる時間は多くはなかった。だから、冊数が減少した、と分析することもできる。

けれど実際には一つ一つの本に丁寧に向き合った。総読書時間は感覚だが、昨年よりも多い。気になる本は何度か読み返し、わからない語句を調べ、他分野との知のネットワークを意識する、など一冊一冊に充実した読書ができたんではないかと思う。本の種類は、簡単に読めるノウハウ本やビジネス本は激減したと思う。社会学や哲学の本が今年は多かった。そして、興味やタイトルで直感的に選ぶのではなくて、本と本のつながりや知と知のつながりを意識して、知識をミルフィーユのように積み重ねていく、そんな読書ができたんじゃないかなと思っている。