いつもとちがう海

近所にあるのはリゾートでもない、観光地でもない、漁村でもない、ただの海。人の気配はまったくない。背後からは高速道路を通る車のエンジンとタイヤの摩擦の無機質な音が後ろで鳴り響き、街と海とを隔離する。目の前からは聞こえるのは寄る波と引く波のざわめきが聞こえる。そして、ときおり松林の方から聞こえる虫の音色。

暗闇にある色の世界。カメラでは写せない波の色、空の色、海の色、星の色。満月だからこそよくみえる。昼とは違う色がある。

暗闇にある怖さ。津波、不審船、ヤンキー、動物。夜の海は想像力を逞しくする。人が畏怖すべき自然はすぐそこにある。

何も起こらないと想定しているから、
想定内の動きをしてくれるから、
コントロールしようとしているから、
安心ができる。

暗闇の海に、安心はない。
何が起こってもおかしくないとざわめく心。
360度、うっすらとした暗闇の世界に無防備に存在する私。
暗闇が作り出す不安、畏怖の感情。

海、時間だけで、光の加減だけで、変わる。

すぐそこにある自然で、自分の中の野生を感じた。

Naoki Yamamoto
1983年12月25日 石川県生まれ。野球漬けの高校生活を経て、北海道大学農学部に入学。「スノーボード、旅、読書」の三種の神器に明け暮れる。卒業後、システム会社に営業職で入社。 2009年株式会社グランマを立ち上げ。1年後に発展途上国の貧困層に必要なデザインやサービスを展示する「世界を変えるデザイン展」を六本木で開催、2万人を動員。2014年12月に退職し、現在無職。仕事の傍ら、ノンフィクション書評サイトHONZに参加中。